Cu roon


「お誕生日おめでとう!」
授業が終わり少しソワソワしながら部室に入ると皆が一斉に言った。
おぉ…!と喜悦していると体に硬い物が次々と押し付けられていく。
プレゼント…!と喜ばせてくれないところが皆らしいな…と思った。
「他の部活も活動してるんだ。静かにしたらどうだ」
そう言いながらドアを乱暴に開けた人物。
――弟だ。
「もう一人もおでましか」
安形の言葉をきっかけに誕生日おめでとう、と祝いの言葉を弟にかける。
ひとしきりプレゼントを押し付け終わると、ヒメコが言い出した。
「そういえば、お前らのためにケーキ用意したんや!はよ食べよ」

これが…ケーキなのか…多分、椿も同じ事を思ったのだろう。
驚愕した表情を浮かべている。
ホールケーキサイズのスポンジにポッキーが刺してあったり置いてあったり。
「ちょっとお前ら…ケーキっていうか」
「かっかっか。そんなこと気にすんなって」
「こんなんダメに決まっとるやろ!」
俺が少し文句を言うと皆が、そんなことないで、当然の結果だろう、などと喋り始める。
椿から視線を感じたような気がして椿の方を向くと、面白いな、と口パクで言ってきた。
ああそうだな、と口パク返ししようと思ったら
「あー!ウチらが喋っとる間に愛の視線交し合うとか何やっとんねん!」
ヒメコが突っかかってきた。
「もうお前ら牢屋行きやでーーーー」
ダメだと言ったのに、とさっきまで揉めてたストレスが俺たちに向かってきた。
「牢屋に行きたくなかったらな、ポッキーゲームでもしなきゃ許さへんで!」
そう言いながら、どんどん顔が般若になっていく。
「ああそれには賛成だな。」
「STO それはとっても面白そうだ。」
「そうですわね。良いと思いますわ」
「そうだな俺も良いと思う」
「ほな、皆もそう言っとることやし、やれや」
より般若に、より身を乗り出してヒメコが言う。
「何を言っているんだ!そんなものするわけないだろう」
椿が必死の反撃に乗り出るがヒメコの般若顔に怯えていることが体と声の震えから確認できる。
「そうだぞーふざけは大概にしろよー」
俺も上ずりそうな声を必死に隠し反撃に回った。
「なに言うとんねん。スポンジにこんなポッキーが置いとるんやから、ほなやれや」
俺の手にポッキーを握らせた。

「じゃあ、いくぞ」
「ああ」
俺はポッキーを口に銜えた。そして椿が端っこを軽く銜える。
「キャー良いわ、良いわ王子!」
「HYK はやくやれケシカス」
罵声と歓声が聞こえる。その中、椿がドンドン食べて行く。
え!?と思ったがそれを知られたくなくて俺も必死に食べた。
そうしたら唇が重なる寸前で椿がポッキーを噛み切った。
「なにやっとんねん椿!面白くないやろ」
俺も、椿となら…と思ってたのを分かったのかヒメコが怒鳴った。
「あのなぁ僕は負けず嫌いではあるがそういうことが好きなわけではないぞ!」
椿の怒鳴り返しだ。

――次の日
「別に藤崎となら…とは少し思ったぞ」
廊下で椿と出会うと小さな声で言った。
ああ、俺もだ。言いたいけど言えなくて、でもそのかわり頬が緩んだ。
俺って愛されてんのかなぁ…

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